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  • 第三企画

ツバメヤ眼鏡店 ものがたり - 2020/07/30 -

更新日:2021年1月18日


「目を守る」貫き50余年


 

 すぎたに・むねひこ 1941年、高円寺生まれ。株式会社ツバメヤ眼鏡店代表取締役。公益社団法人日本眼鏡技術者協会SS級認定眼鏡士。東京眼鏡販売店協同組合常任理事。特定非営利活動法人東京高円寺阿波おどり振興協会理事。同協会所属「江戸っ子連」会長。高円寺阿波おどり連協会元会長。ジェイコム『東京高円寺阿波おどり生中継』番組解説者

 

 人家の軒先を好んで営巣するツバメ。稲の害虫を食べる益鳥として知られる。「鳥だから目がいい、人にもいい、と名付けられたツバメヤ。目が良くて人のためになる、先代の気持ちを忘れずにやってきました。商いは人のために尽くすもの」

 ツバメヤ眼鏡店2代目社長、杉谷宗彦氏(78)。取材中、「喜ばれる」を繰り返した。来店客や地域に喜ばれる。「人のため」が日常に在った。

 父外治さんが叔父の店から高円寺に独立開業したのは1936年のこと。杉谷氏は41年、4人きょうだいの末子に生まれた。半月後に太平洋戦争開戦。戦火の記憶は無いが、高円寺も焼け野原となり、幼子を守った両親がしのばれる。

▲1955(昭和30)年頃のツバメヤ

 兄は学者となり、次男の杉谷氏が跡継ぎに見込まれた。10代から店を手伝い、広島へ丁稚奉公に出て2年修業、20歳でツバメヤに入った。

 地域住民の目の健康に尽くし、半世紀余り。低価格チェーンが台頭すれど、店内には数万円の品が多く並ぶ。「鯖江眼鏡には日本人のものづくりの伝統がある。多少無理しても壊れない安心感がいい」「これは日本製の最高峰。バネが柔らかく、一日かけても負担を感じない軽さ」。地域の年配者がかけて楽に過ごせる顧客本位の品揃え。「専門店としてしっかりした眼鏡を販売する。ぶれずに続ける。コロナでも変わりません」

 眼鏡屋が好きだ。「半医半商といって、売るだけでなく目を守る。視力を通じて喜んでいただくんです」。斜視の来店者には、専門病院を紹介した。治さなければストレスが続く。「手術でよくなり、ご両親もすごく喜んで。相談を受けるのも眼鏡屋の役目」

 これからの眼鏡店は?

 「地域の専門店として補聴器に力を入れています。高齢者の聴力を補う重要アイテムで、喜ばれていますが、日本は装着率が低い。眼鏡屋がもっと扱い広めていく時代です」

 高円寺の夏といえば阿波おどり。「江戸っ子連」を15年率いた杉谷氏は、若い頃から夢中で踊り、鉦を叩き、現場を熟知。運営面でも阿波おどり発展を下支えしてきた。

 「何とも言えないリズムと踊り。三味線、笛と踊るのがいい。阿波おどりの絆で南北の商店街が何々ちゃんと呼ぶ仲になれた」と魅力を語る。

 57年、駅南側のパル商店街青年部が踊り始めた。「ここ純情商店街は67年から。中央線の高架化で南北が陸続きになり、やるぞーと」。やるからには本格的にと、本場徳島に毎年通って阿呆連に徹底的にへばり付き、踊りと息吹を学んだ。「阿呆さんが姿勢を喜んでくれた。10年して『親戚付き合いになったね』と言われた時にはもう。のめり込みましたね。ようやく阿呆連の浴衣を着させてもらえた」。深い親交。現連長にも120%吸収するよう言っている。「阿波おどりは日本の文化芸能の原点。(今年は中止となり)残念ですねえ」

 庶民的で、新鮮でいいものを扱うこの街が誇りだ。商店街を横のデパート、一つの会社のように考えている。「いい店が無くなったら寂しい。地域に密着した商店街の在り方を常に模索しています」

 現状は、エリア内の全事業者が商店街に加盟するわけではない。「商店街ゾーンを決めて負担金をもち横のつながりをもつ。地域のお客様に喜ばれることを、一丸でやる。それを都市集中でなく全国でやらないと、地方はさらに大変」と危惧し、法整備を望む。

 15—16年前、商店街の理事長時代に、住民登録すると商店街でサービスが受けられる「高円寺パスポート」を企画した。目に浮かぶのは、住民たちの笑顔。何らかの形で実現したい、今でも夢だ。

 純情商店街は60年前から続く「びっくり市」など、地域に喜ばれる仕掛けを打ち出してきた。30年ほど前には、「夏は阿波おどりがあるから寒い2月に演芸を」と、落語会を始めた。「阿波おどりも演芸も、我々地元の人間が実際にやっているから意味がある。昨年第10回となった全高円寺の演芸まつりの下地にもなったと自負しています」。自店ではツバメ寄席を開き、高円寺亭錦志の名で高座にも。「一応着物を着ましてね」と照れた。

 最後に、杉谷氏にとって高円寺は?

 「まあ、いいところですね!」


目には長女ゆき絵さんが仕入れた藍染眼鏡。「徳島は藍染が日本一。そして阿波おどりのつながりがある。他の眼鏡もいいけど外せなくなっちゃった」と愛用中
 

株式会社ツバメヤ眼鏡店

住所:東京都杉並区高円寺北2-22-4▷☎03-3337-4133▷営業時間10−20時▷定休日:水曜▷公式ホームページ(HP) https://www.tsubameya-m.jp/▷1936(昭和11)年、杉谷社長の父外治さんが高円寺にて創業。4度の移転を経て高円寺純情商店街に在る現在地へ。「楽・らくメガネ」をモットーに、1人1人に合ったメガネ・コンタクト・補聴器を確かな目でセレクトし販売する。妻庸子さん、長女ゆき絵さん、次女ちさとさんとの家族経営


動画編はこちら↓


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