古着の1点1点に愛情
おおはし・かよこ 1971年、都内生まれ。品川の高校を卒業後、上野の古着店でアルバイト。服が好きだと気付き、専門学校で洋裁を学ぶ。高校時代に友人たちと過ごし慣れ親しんだ蒲田で、22歳の時に念願の古着店を開業。30歳で、憧れの高円寺に移転した
コロナの影響で３月から１カ月余り休業。大切なお客様を笑顔にしたく、ようやく古着店「ステディワン」を再開した大橋香代子さん（49）を、思いがけないことが待っていた。
「『大丈夫だった!?』とたくさんの人が来てくれました。大変な時に助けるのが絆、貢献するよって、頻繁に買ってくださる地域の方々。年金が入ったら来てあげるね、コロナに負けず頑張るんだよと言ってくれた常連さん。同じ商店街のおじさんは、コロナ休業の給付金手続を教えてくれました。上階にお住まいの大家さんは、毎日差し入れを手に下りて来てくれます。みんな心配してくれていて、家族みたい」。励まされた。
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創業の地の蒲田から移転先を探していた20年前、路地裏の小さな店を探索するのが楽しい高円寺は、大橋さんにとって、下北沢・原宿と並ぶ憧れだった。古着店は辺りに数軒点在するのみ。賃料も手が届いた。
「地下の物件を決めかけていた私に、地場の優しい不動産屋さんが、パル商店街の更地に建物ができるからその１階が絶対にいいよと勧めてくれました。ご縁、ターニングポイントでした。あの地下ではうちの集客は無理だったと思います。本当によくしていただき、人とのつながりの有難味を知りました。私にとって、神です。大家さんも小学生のお子さんがいて女性入居者が安心だと考えていたそうで、とてもよくしてくださいました」
高円寺での原点は、出会いから始まった。
それから19年。10周年の頃、高円寺に根付いたと感じるようになった。パルから現在地のルック商店街に移っても、良い人間関係がついてきた。「メイン通りに古着屋ができた時は、こんなところに、とびっくりした」と振り返るように、高円寺には古着店が続々とオープン、今や全体で「３００軒以上」とも言われる激戦区に様変わりしている。しかしその中に在って、ステディワンの客足は絶えない。
店名には、この店で「お気に入りの１点」に出会ってほしいという、思いを込めた。貫くのは「期待に応える店」づくり。欲しい服に会える店。良質な服を安く楽しめる店。定休日以外は開いている店。「足を運んでくださる大切なお客様を、絶対に裏切りたくない」
20～70代の顧客を思い浮かべ、１点１点、愛情を込めて商品を選んで仕入れている。年配者にも楽に着られるよう、肩周りの着心地などに細かく気を配る。生地や縫製が良い古い時代の製品を主に扱い、リメイクでデザイン性を高めることも。そして価格は「安くてもこんなに楽しめる、というくらい安い、ロープライス」で、学生でもお小遣いやアルバイト代で購入しやすい千円未満からという設定だ。大事に着られてきた良質な服を見出し、これから愛用してくれるであろう人々に届ける。手にした人々の笑顔が嬉しい。
特徴的なのが、大橋さんのリメイク術。自身の高身長に合う既製服がなかなか無く、生地から自作したり既製服の裾に布を縫い足したりしていたのがきっかけで、古着に様々な手を加えるようになったといい、既製服ともハンドメイドともまた一味違った個性を放つ。例えば、リボン付きの白ブラウスには、鎖骨から胸元にかけて白いレースを縫い付けた。青いジーンズには、片側のポケットにレースをミシン縫いし、その中央にクリスタルボタンを留めた。立体感が生まれ、可愛らしさや女性らしさが引き立った。まさに１点もの。次に着る人に長く愛される様が浮かぶ。
「洋服が好き。作っていて幸せ。洋裁をやって本当に良かった。いつも楽しみに来店してくださるお客様に感謝し、今後も努力し邁進していきます」
すらりとした長身にさりげないレースマスク姿。目を三日月にして誓った。
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間もなく出店20年となる高円寺への思い。
「お客様、大家さん、並びの店員さんたち。人とのつながりが温かい街です。10年来の常連さんはみんな面白い！ 80代の大家さんは３年前に私がギックリ腰をやって以来、治っても毎日、健康のためにと言って店のシャッターを開けてくれます。開店10分前に窓から手を振るんですよ、めっちゃ仲良し。商店街の皆さん、いつも元気をくださり感謝しています。お互いに助け合い、この大変な時を乗り越えたいです」
フリルを縫い付けて可愛らしさをプラスしたリメイク白デニムＳＴＥＡＤＹ－１ Ｋｏｅｎｊｉ
住所：東京都杉並区高円寺南2-48-6▷☎03-3312-8663▷営業時間：12－20時▷定休日：月曜▷公式ホームページ（ＨＰ）https://steady1koenji.wixsite.com/seady-1▷「リーズナブルで素敵な１点ものを」。良質で手ごろな価格の商品を数多く取り扱い、飽きのこない店づくりに日々努力。古着の半数近くに、フリルやストーンなど大橋さんの感性によるリメイクを施し、ファンを魅了している。靴、ベルト、アクセサリー、財布など小物類も充実