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  • 第三企画

きもの工芸 大黒屋 - 2020/08/06 -


真っ正直 信頼の専門店

 

 にしかわ・よしのぶ 1943年生まれ。大学卒後、同業店で3年修業し、20代半ばで家業を継いだ。「この道しか知らないではなく違う目が必要」と、絵画や陶芸などに触れ感性を研ぎ澄ます。株式会社大黒屋会長。高円寺パル商店街振興組合相談役。高円寺商店街連合会役員。特定非営利活動法人東京高円寺阿波おどり振興協会理事

 

 かつて20軒あった呉服店が、今では高円寺駅南側エリアで唯一だという。今春はコロナ流行で2カ月半休業。世間では催しや稽古事が自粛された。「これでは着物は要らなくなる。大変な時代」。だが昨年創業90年を迎えた大黒屋、信念に揺るぎなし。

 「お客様にお求めやすい価格で品良く着ていただきたい。その一心で生地や染めにこだわり、作り手と一緒に作り上げていく工芸品。幾世代にわたりお使いいただきたい」

 2代目で現会長の西川芳充氏(77)。先代の教え「正直であれ」を一途に守り、確かな目で確かな品を商う。

 着物は日本の伝統。近年はデジタル印刷による廉価品が増えたが、大黒屋が是非とも提供したいのは、職人仕事が光る着物であり、奥深い着物文化である。例えば絞り染めは、1色ごとに絹地を絞って染めては解き、色の数だけ染めを重ねる。絞り方、染め方、手描きや刺繍の加え方など様々な要素により、職人の感性が絵柄や風合いの美しさに表れる。世界は無限に広がり、「本物に勝るものは無い」。

 買い付けるのは、心から惚れ込んだ、大黒屋カラーに合う反物。「プリントに勝ち抜くセンスある商品づくり、自分のオリジナルを求めています。柄の位置などデザインをぱっと、


こういう形にとね。もって生まれた個性に加え、色んなものから感性を磨きます」




 着物を愛してやまない西川氏。「着物の全てが好き。美しく着て楽しんでほしい。愛しているからこそ続けられる。商売の継続は難しく、残るのは数軒です。うちは3代目(長男の和晃社長)がやってくれている、そこに魅力があるし、4代目にもという心持ちもある」。4代目とは小学生の孫のこと。「まだ10歳、どうなるか。だけど、いてくれることが有り難い。何事も感謝。常に感謝。うちのモットーです」。嬉しそうに微笑んだ。

 高円寺をこよなく愛する。

 「全てが好き。親しみやすい。街が優しい。わがパル商店街が阿波おどりを始め、一つにまとまった。ルック商店街、駅北の純情商店街が加わり、南北一体となっていった。全ての町会がまとまった。楽しくみんなを盛り上げようと自然に集まったからかな。町内会のご協力もあって、街全体でやってできちゃう、これが一番。街の発展になっている」

 時は20世紀中盤に遡る。隣駅・阿佐ヶ谷の商店街では今も続く七夕まつりが1954年に始まり、盛り上がりを見せていた。「うちもどうにかしないと」とパル商店街の青年たちが始めたのが阿波おどり。「恥ずかしくて全員厚化粧。私は2年目かな、化粧を塗りたくって小学生で出たのを覚えています。それから中高と、独立連ができるまでやっていました」。やがて飛鳥、江戸浮、葵新など7つの独立連がパルに誕生した。

 「一番大事にしたのは、礼に始まり礼で終わる。ご挨拶し、時間厳守でぴたっとやめる。指導者が徹底して教えた。有名連は特に厳しく、どこに行っても恥ずかしくない、パルさん違うねと言われる。これが100万人が来る素晴らしい阿波おどりに発展した。踊り中の酒は禁止。目に余れば半年はダメ、きちっと罰を与えた。何でもOKでは良さが出ない。商店街で、売るだけでなく楽しんでもらいたい。そんなことを考えながら発展してきた。阿波おどりは一つの時代をつくり上げた」


 中でも「パルのまとまりは一番」と胸を張る。「何事にも話し合える関係ができていて、商店街としての結束が速い」。アーケード取り換え事業の際は、業者任せでなく商店街メンバーが泊りがけの視察や見回りを行い、メンバー間や業者との話し合いで万事進んだ。「友達集まるアーケード、来てもらえる商店街。先代からいいアーケードをつくってきた。いかに喜んでもらえるか、楽しんでもらえるかという街づくり。会話がないと始まらない」

 振り返る時も、未来へ思い馳せる時も、いつも胸にあるのは、感謝。「大正からの先々代たちのお蔭で高円寺の街ができ、先代たちが阿波おどりを始めて街をつくり上げた。3代目に受け継がれ、4代目がいてくれる。会話でまとまれる商店街だから、新しく入る人がいて、また話し合いをして意見を交わし切磋琢磨して融合する、互いを良くしていける。これからもそう」



西川氏(右)と3代目・和晃氏
 

株式会社大黒屋

住所:東京都杉並区高円寺南4-7-9▷☎03-3311-4427▷営業時間:11−19時▷定休日:火曜▷公式ホームページ(HP) http://www.k-daikokuya.com/index.php 着物・帯の通販サイトhttps://shop.k-daikokuya.jp/▷1929(昭和4)年、西川氏の父利三郎さんが高円寺にて創業。老舗専門店ならではの上質かつ豊富な品揃えが、高円寺内外の着物愛好者を魅了する。琉球紅型の人間国宝・玉那覇有公氏作など逸品多数。着付け教室ほか、着物文化を伝え広める催しも開いている



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