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  • 第三企画

寝具・阿波おどり用品 豊喜屋 ものがたり - 2020/09/23 -


顧客思い 問屋さん思い


 

 かわはら・はじめ 1953年、父廣氏と練馬出身の母キヨ子さんの長男に生まれる。若かりし日から仕入れで問屋街を巡り、今では妻真澄さんとの街歩きが趣味。「東京っていいなあ」と感じるこの頃だ。豊喜屋株式会社代表取締役社長。高円寺パル商店街振興組合理事長。特定非営利活動法人東京高円寺阿波おどり振興協会副理事長。同協会所属「江戸浮連」連長

 

 必需品も、あって助かる便利小物も、阿波おどり用品が何でも揃う豊喜屋。写真やポスターに装われた店内が心を浮かれさせる。高円寺阿波おどり創設メンバーの父に連れられ踊り始めて60年、この催しを熟知する4代目社長・河原一氏(67)=高円寺パル商店街振興組合理事長=が、顧客に喜ばれる品を良心価格で提供し、街の元気を支える。

 1918年、曾祖母が深川で呉服店を創業した。関東大震災の翌24年、祖父が店を再興したのが駅開業2年の高円寺。復興特需で駅周辺の人口増を見込んだ。読み通り、昭和初めの高円寺は東京有数の商店街に。だが戦火が襲う。

 父・廣氏は復員後、バラックで店を開いた。綿が統制で入らず一時は瀬戸物売り。大衆向け綿反呉服に戻り、庶民の洋装化で寝具店に転換した。商店街の依頼で阿波おどり衣装を扱い、専用品が無い中で江戸神輿の足袋など売っていた。

 徳島と縁ができ、今や足袋だけで数十商品。さらに河原氏が一般的な雑貨から足指の痛みの緩和材などを見出して仕入れ、踊り子に人気だ。

 努力と工夫の1世紀。代々、綿を軸に地域に応えてきた。豊喜屋が守り継ぐ商いの心。河原氏は瞬時に「問屋さんを大事に」と言い切った。



 「お客様を大事にするには、問屋さんがいい品を安く売ってくれないと。問屋さんが苦しい時には残った数点を買い取る。またいい品を持ってきてくれる」。往時は繊維問屋街で日がな一日、話し込んだ。担当者との関係づくり。次男の健介さんにも言っている。

 高い建物は無く、道は砂利混じり、少年が三角ベースで遊んだ昭和中期の高円寺。パルの前身・高南商盛会に発足した青年部が阿波おどりを始めた。「誰も本物を知らない。長仙寺で顔を塗りたくってバーッと走り出て通りを駆け抜けた。私も第5回頃に初めて出た。もう


恥ずかしくってね」

 青年部員や子弟、住み込みの従業員が踊り、観客は店に背を向けてばかり。売上にならず、廃止論も出た。4年目は道路許可が難航、「神社の祭礼」で通した。7年目は桃園川氾濫で2日目中止、熱心な踊り手が怒鳴り込んできて、理事長だった廣氏のやり合う姿を目の当たりにした。

 「運営と踊り手の思いは時に相反する。そこで事故の無いように考えるのだなと。その時その時、知恵を絞って続けてきた。他の商店街も加わって、辺り全部が演舞場になった。この、みんなで一緒にとやったのが先輩たちのすごさ。道一本ではだめだったろう。街全体でやらないとと考えてくれた」。当時の幹部たちに感謝は尽きない。

 商盛会連再編で67年に江戸浮連誕生、98年に連長を継いだ。当時は希望者を誰でも受け入れ、出入りが多かった。近年は友好連の蜂須賀連から徳島の正調おどりを学び、「友好連に恥をかかせない。あいさつ、規律をピシッと」。徳島の大学に進学し蜂須賀連で修業した健介さんと、技量・礼節を徹底する。新人加入、衣装新調と、好ムードだ。

 そこにコロナ流行、開催断念。連員や家族の安全、阿波おどり全体を考え、練習も自粛とした。「来年8月へは年明け2月3月には練習が始まらないと」。気掛かりは多く、状況を


注視する。「足袋が動いてきた。新人が入ると動く」

 話は街の今・将来へ移る。「広い土地が無くて大型店ができない、それがいいのかな。何でもウエルカム、変わった人が歩いていても振り返らない、みんな受け入れる。商店街はオープンだし、人に声を掛ければ優しい、住みやすい」。自然と言葉が弾む。

 パル商店街では昨秋、加盟店と購買客が直結するスタンプラリー事業を展開、好評を博した。異なる3店で買い物をすると商品券が当たる。「参加店共通で使えるのに、買った店に『当たったよー』とまた買いに行ってくれて。すっかり予算オーバー。でも続けたい」。現在通年開催中で、11月の第7回抽選会は、コロナ禍を乗り越えろが合言葉。外れ無し。

 「商店街は、大変な時があっても互いに組合員。理事たちが頑張り当事者と話し合ってきた。同じアーケードの店どうし。新店や新任店長には必ず挨拶に行き、『何かあったら言ってね』と声を掛ける」

 街のため、実現したいことがある。「駅のガード下に改札口を設けたい。利便性が上がる。人の流れが変わる。何とかやりたい。駅の阿波おどり調の発車音も、JRに要望してできた。働き掛けていく」

 伝統あり創意工夫あり、実直さと面白さが絶妙に同居する高円寺。まだまだ熱くなる。




壁には小学生の頃の阿波おどり写真も
 

豊喜屋株式会社

住所:東京都杉並区高円寺南3-58-27▷☎03-3311-8061▷営業時間:10ー20時(変更の場合有)▷定休日:不定休▷公式ホームページ(HP) https://www.toyokiya.jp/▷1918(大正7)年創業、24年から高円寺。鳴り物・衣装・DVD等の阿波おどり用品全般、寝具、高円寺ロゴTシャツなどを販売。関東一円から顧客が訪れ、北海道や九州、海外からもネット注文が入る、阿波おどりに欠かせない存在だ。徳島「岡忠」特約店。東京高円寺阿波おどり振興協会指定店

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